大嫌いなはずなのに。~私を弄んだ御曹司に溺愛されます~

 桐生くんがおかしい。


 私を抱いたあの夜からなんだか様子がおかしい。


 事あるごとに私の頭を撫でてきたり、優しく抱きしめてきたりする。


 挙句の果てには「キスしたい」とまで言い出したので、私は桐生くんを突き飛ばした。


 何を考えているのか全く分からない。


 桐生くんならモテるだろうし、どうして私なんかを性欲のはけ口に使うんだろう…?


 その日、どうしても仕事で分からないことがあって、私は仕方なく桐生くんに声を掛けた。


「あの、社長、すみません。業務でどうしても分からない処理があって…」


 桐生くんは顔を上げた。


「見せてくれ」


「はい…」


 私はノートパソコンを持って、桐生くんの元へ向かう。


「ここの取引先との対応なのですが…」


 私のノートパソコンを受け取った桐生くんは、そのパソコンを自分のデスクに置いたかと思うと、私を強く引っ張った。


「わわっ!」


 バランスを崩した私は、座っている桐生くんの胸にダイブしてしまう。


「ご、ごめんなさいっ!」


 慌てて立ち上がろうとするも、そのまま抱きしめられ、桐生くんの膝の上に座らせられてしまった。


「ちょ、おろしてくださいっ」


「教えてもらいたいんだろ?そこで大人しく見てて」


 そう言って、桐生くんは私のパソコンを操作して、処理の仕方を教えてくれる。


 教えてくれているのに、こんな体制じゃ集中できないし、全然頭に入ってこないんですけど!?

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