大嫌いなはずなのに。~私を弄んだ御曹司に溺愛されます~

「こんなときに言うのはずるいって分かってるけど、俺、ずっと桜川のことが好きだったんだ」


「へっ!?」


 小林くんの言葉に眠気が一気に吹き飛んだ。


「総務部に行くといつも桜川がいて、笑って話してくれて、そんな明るい桜川が好きだった」


「え、?え?」


「部署が移動になってなかなか会えなくなっちゃったけど、また誘ってもいい?」


「え、う、うん…」


 小林くんが私のことを好き?そんなことってある?


 あの爽やかで優しくて人気者の小林くんが?私を?


 付き合うなら小林くんみたいな人がいいなぁ、とは確かに思っていたけれど、いざ告白されると恐縮してしまう。


 小林くんはゆっくりと私を離すと、真剣な瞳で私を見つめた。


「考えておいてほしい、俺とのこと」


 小林くんの目を見れば分かる。私のこと、本気なんだって。


「分かっ、」


 分かった、ちゃんと考えるよ、そう続けようとして、私の言葉と私を呼ぶ声が重なった。


「美織」


 振り返るとそこには、桐生くんがいて、眉間には深く皺が刻まれていた。


「桐生くん…」


 桐生くんは私の手を取ると、そのままずんずんと歩いていく。


「ちょ、ちょっと!?なんですか!?」


「緊急の仕事だ、来てくれ」


「え、え!?」


 連れ去られる私をきょとんと見ていた小林くんが、私に声を掛ける。


「桜川!俺、本気だから」


 私はこくりと小さく頷いた。


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