大嫌いなはずなのに。~私を弄んだ御曹司に溺愛されます~

「どうして、私を弄ぶの…?好きでもないくせに、私に触れないでよ…」


 なぜだか涙が溢れてきた。感情が昂ぶったせいかもしれない…。


 私の言葉に、桐生くんは驚いたようだった。


 やっぱりこの人は、私の気持ちなんて全く分かってない…。


「美織」


 桐生くんは私の名前を呼ぶと、優しく壊れ物でも扱うかのように抱きしめた。


「美織、悪かった」


「な、に…?」


「あの時、美織を勢いで抱いてしまったこと」


 あの時…というのは、きっと高校生の時のことだ。


「俺はずっと、美織のことが好きだった」


「え…?」


 桐生くんの口から、信じられない言葉が飛び出してきた。


「当時、ブルーホールディングスの跡取りだと言って、ちやほやされることが多かった。男子も女子も、近付いてくる人はみんな、うちの会社目当てだと思ってた。けれど、美織だけは違った」


 桐生くんは、高校時代を懐かしむように目を細めた。


「美織だけは、会社のことに興味なくて、ただただ俺を同級生として接してくれていたんだ」


 確かに高校生の私は、桐生くんの会社のことには詳しくなかったし、なんかすごいんだな、くらいの感覚だったと思う。


「美織に気持ちを伝えるつもりだった…けれど、会社目当てで近付いてくる女が多くて、それをあしらっているうちに、変な噂が立つようになってしまった」


 それが桐生くんが女遊びをしている、というもの。


「相手が誰であろうと、美織以外と付き合うつもりはなかった。でも、断ってもしつこく食い下がってくるやつが多くて」


 キスしてくれたら諦める、ぎゅーしてくれたら諦める、触ってくれたら諦める。


 そう女の子達に言われた桐生くんは、渋々対応した。


 条件を飲めば、簡単に引き下がってくれたらしい。


「それをあの日、美織に見られた」


 実際は女の子に少し触れただけ。それでも十分えっちだと思うけれど…。

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