大嫌いなはずなのに。~私を弄んだ御曹司に溺愛されます~

「美織と生徒会室で二人きりになって、その時の美織の表情を見たら、自分を止められなくなっていた」


 桐生くんは目を伏せて、もう一度謝罪した。


「あの時は本当に悪かった。あんな、勢いで抱くつもりなんてなかった。ずっと後悔してた。それから美織と疎遠になってしまったことも、謝れなかったことも」


「そう、だったんだ…」


 ずっと最悪な出来事だったと思ってた。許せないって思ってた。


 遊び人の悪い男に、初めてを奪われてしまったんだって。


 でも、桐生くんは私のことをずっと好きだったんだ…。


「あの小林ってやつに告白されたんだろう?」


「え、あ、うん…」


「美織のことは今でも好きだ」


 桐生くんは、そうはっきりと口にした。


「好き……?」


「好きなひとしか、俺は抱かない」


「あ……」


 桐生くんの切れ長の瞳が、私を真剣に見つめる。


「私、私、は……」


 私の気持ちは……。



 高校生の頃。


 私は桐生くんと一緒にいるのが好きだった。


 かっこよくて、人気者の彼だったけれど、誰に対しても分け隔てなく優しかった。


 困っている生徒を見過ごせなくて、あちこちに首を突っ込んで。


 それでも最後はみんな笑っていた。


 桐生くんのおかげだって、嬉しそうにしてた。


 そんな姿を見るのが私も嬉しくて、この人素敵だな、って思ってた。


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