大嫌いなはずなのに。~私を弄んだ御曹司に溺愛されます~
今日も社長室で二人きり。
私と桐生くんは淡々と仕事をしている。
以前みたいに強引に触れてくることはなくなった。
「コーヒー、ここに置いておきます」
「ありがとう」
たったそれだけのことに、丁寧にお礼を言って、優しく微笑んでくれる。
思わずドキッとしてしまって、私は慌ててデスクに戻った。
桐生くんのことなんて、大嫌いだったはずなのに…。
私、おかしくなっちゃったのかもしれない…。
書類を届けるため、営業部にやってきた。
そこにちょうど小林くんがいたので、書類をお願いしようかとも思ったのだけれど、声を掛けようとして、私ははっとした。
そういえば小林くんと話すの、告白されて以来かも…。どう、接したらいいんだろう…。
私がもたもたしている間に、ふとこちらを向いた小林くんに気付かれてしまった。
小林くんは笑顔で私の元へとやってくる。
「桜川、お疲れ」
「お、お疲れ様。あの、これ営業部宛てに。お願いしてもいいかな?」
「もちろん、ありがとう」
小林くんは私が持っていた書類を快く受け取ってくれる。
「それで、その、今日、夜時間あるかな?少し、話したいことがあって…」
小林くんは静かに頷いた。
「分かった」
終業後、エントランスで待ち合わせすることを約束して、私は社長室に戻った。