大嫌いなはずなのに。~私を弄んだ御曹司に溺愛されます~

「どうした?忘れ物?」


「あ、う、うん…。スマホ、忘れちゃって…」


「そうか」


「き、桐生くんこそ、わ、忘れ物?」


「そう、俺もスマホ」


「あ、そ、そうなんだ」


 桐生くんの目が見られなかった。


 無理だよ、さっきあんなことをしていた彼と目を合わせるなんて。


 どうしたって思い出してしまう。


「じゃ、じゃあ、私はこれで…」


 目を伏せながら、私は生徒会室を出ようとする。


 しかしその腕を彼が掴んできた。


「桜川」


「な、なに…?」


「お前、何か変じゃないか?」


「へ、変?」


「どうしてこっち見ないんだ?」


 私は渋々顔を上げる。


 桐生くんは驚いたように目を丸くした。


「顔、真っ赤だけど」


「え!?ゆ、夕陽のせいかなぁ…」


 桐生くんは私の腕を離すと、声のトーンを落としてこう言った。

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