大嫌いなはずなのに。~私を弄んだ御曹司に溺愛されます~
小林くんと少し話した後、私はスマホを忘れたことに気が付いて、社長室に戻った。
するとまだ桐生くんが残って仕事をしていた。
私が戻ってきたことに驚いたように声を上げる。
「美織?どうしたんだ?」
「あ、スマホを忘れてしまって」
そう説明すると、桐生くんはまた少し表情を曇らせた。
「そうか…」
あ、なんだかこれって、あの時みたいだな、と思った。
高校生の時、スマホを生徒会室に忘れてしまったあの日。
私は思い切って、桐生くんの元へと歩みを進める。
「どうした?」
「お仕事中すみません。少しお話してもよいでしょうか?」
「ああ」
ここ数日、自分の気持ちと向き合ってきた。
私はどう思っているのか、どうしたいのか。
小林くんと付き合えたら素敵だな、ってずっと思っていた。
それなのに、私の心はそうじゃなかった。
私には、忘れられない恋があったんだ。
「桐生くん、私、小林くんと話してきました」
「そうか…」
「小林くんからの告白、断っちゃいました」
「え…」
桐生くんは目を丸くした。
「私、きっとずっと桐生くんのことが好きだったんです」
そうそれはきっと高校生の時から。
あの時、桐生くんを拒めなかったのも、きっと本当は、彼のことが好きだったから。
桐生くんは私のことなんてなんとも思っていない。
他の誰かと同じように、私も遊ばれただけ。
本当はそれが悲しかったんだ。
叶わない恋だと分かっていたから、私は自分を守るために自分の気持ちを隠したんだ。
私の大切な初めてを奪った最低な男と思い込んで。
私は、桐生くんが好きだったんだ。