大嫌いなはずなのに。~私を弄んだ御曹司に溺愛されます~

 子会社化の発表があって、何日かが過ぎ、年度末も迫るとある日。


「桜川」


「はい?」


 呼び掛けられて振り返ると、そこには一人の男性社員の姿があった。


「これ、備品の発注表なんだけど、今月もお願いできるかな?」


「もちろん」


 私は快く発注表を受け取る。


「小林くんはいつも丁寧に仕事してくれるって、総務部でも人気だよ」


「え、いや別に普通に仕事してるだけだよ」


 はにかむように笑う男性社員は、同期で営業部の小林くん。


 優しく朗らかで、人当たりもよし!仕事も丁寧で、女性社員からとても人気がある。


 男性に少し嫌悪感を抱いている私でさえ、小林くんはいいなーと思ってしまう。


 もし恋人ができるなら、小林くんみたいな人がいい…なんて。


 まぁ、私なんかが小林くんと付き合えるわけがないんだけどね…。


「桜川達総務部のおかげで、こっちは快適に仕事できるんだよ。こちらこそいつも助かってますって、みんなにも伝えておいてよ」


「分かった、伝えておく」


 そういうところなんだよなー、と私は一人でうんうん頷く。


 小林くんのこういうちょっとした気遣いとか優しい言葉が、すごく素敵なのだ。


< 8 / 43 >

この作品をシェア

pagetop