大嫌いなはずなのに。~私を弄んだ御曹司に溺愛されます~

 ついに新年度がやってきた。


 大きく体制が変わるわけではないけれど、新年度一発目とあって、ブルーホールディングスの新社長が挨拶にやってきた。


 新社長は思ったよりも若く、私達と然程歳が変わらないように見えた。


 高そうなスーツをびしっと着こなしていて、若いように見えるけれど、しっかりと威厳のあるような、自信のあるたたずまい。


 すごい、もう立派に社長さんなんだなぁ…。


 そんなどこ目線か分からない感想を抱いてしまった。


「この度、社長として就任した、桐生 蒼弥と申します」


 ………ん?聞き間違い?


 目の前でスピーチする新社長をまじまじと見つめる。


 今、名前なんて言った?桐生、蒼弥?


 私は自分の耳を疑った。


 確かにそう名乗ったような気がする。


 聞きたくない名前第一位。


 けれど、きっと本人ではない。ただ同姓同名なだけだ。


 だって、高校の時の桐生くんとは、似ても似つかない。


 がっしりとした体格に高い鼻が特徴の整った顔。


 まぁ、卒業まで彼の顔を見ることはなかったから、もう彼がどんな顔だったかなんて覚えていないけれど。


 ぼーっと考えているうちに、桐生社長のスピーチは終わっていて、私は慌てて拍手をする。


 新社長がいなくなって、私達はいつものように業務に取りかかる。


 パソコンを開くと、新年度、新体制とあって、社内メールが山のように来ていた。


 大体は役員の挨拶だったけれど、人事異動のお知らせ、というタイトルのメールが目について、私はそのメールを開く。


 自分には関係ないことだろうけれど、一応目だけ通しておこう。


 そう思っていると、後ろから声を掛けられた。

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