我が家の二人の王子様は、私のことを溺愛しすぎ

第24話 出ちゃった答え

 真奈ちゃんと大場さんにお礼を言った後、午後の授業が始まる。
 それが終わった後、今日は久しぶりに伊織くんや香織ちゃんと一緒に下校した。

「ふふっ、華恋と一緒に帰るの、久しぶりだね。ようやく華恋成分を堪能できる~!」
「わわっ!? 大袈裟だよ。それに、朝はいつも一緒に来てたじゃない」
「朝は朝、放課後は放課後だって」

 町中にも関わらず遠慮なしにくっついてくる香織ちゃん。
 脅迫状のせいで、登校時はともかく下校の時は何かと理由をつけて別々に帰るようにしてたんだけど、香織ちゃんは寂しかったみたい。
 かくいう私も、胸の奥がチクチクしてた。
 家に帰れば会えるのに、変なの。

 伊織くんはくっついてはこなかったけど、安心したみたいに笑ってる。
 二人とも、心配かけちゃってゴメンね。それに、ありがとう。

 それから家に帰って香織ちゃんはお風呂に入って、伊織くんはリビングで録画した刑事ドラマを観ていた。
 一昨日放送されたものだけど、その時は指紋を調べるのに忙しくて観れてなかったの。

 ソファーに腰掛けながら、テレビ画面を見つめる伊織くん。
 そして私もその隣に、ちょこんと座った。

「伊織くん、刑事ドラマとかミステリー、本当に好きだよね。けど現実でもドラマみたいに調べて、犯人までたどり着いちゃうなんて凄いよね。あの時の伊織くん、格好よかったよ」
「そ、そうか? ……そう言ってくれるのが、何よりのご褒美だよ」

 顔を赤らめながら、目を反らす伊織くん。
 けどご褒美って、別に何もしてないんだけどなあ。

「けど、格好いいのは華恋の方だろ。長戸にガツンと言ってたじゃないか」
「あ、あれね。上手く言えたかは分からなかったけど……。でもね、あの時言えたのは、実は伊織くんのおかげなんだよ」
「俺の? なんで?」

 どういうことかわからないと言った様子で、ドラマそっちのけで食い入るように私を見つめる。

「伊織くんならああいう時、絶対に黙ってないだろうなって思って。ほら、保育園の時に何度か、年長生にちょっかい出されたじゃない。私達が泣かされたところに香織ちゃんがやってきて、やり返すのがパターンになってたけど……」
「あ、ああ……。あの頃の俺、全然弱くて。全然華恋の力になれなかったんだよな。情けない」
「わーっ、待って待って。言いたいのはそこじゃないから!」

 恥ずかしがるような悔しそうな顔をしながら、頭を押さえる伊織くん。
 もしかしたら、触れられたくなかったのかも。だけどね……。

「情けなくなんかないよ。だって伊織くん、一度も負けてなかったじゃない。泣かされても立ち上がって、何か言われても言い返してたでしょ」
「それは、負けを認めるのが悔しかっただけで……結局は、いつも香織に助けられてたし」
「でも、それじゃあダメだって思ったから、立ち向かっていってたんでしょ。私ね、長戸さんに好き勝手言われて怖くなったけど、その時小さかった頃の伊織くんを思い出したの。年長生にも立ち向かっていく伊織くんが格好よくて、だから私もこれじゃあダメだって気がして。言いたかった事が言えたんだよ」

 いじめっ子をやっつけてくれてた香織ちゃんももちろん格好よかったけど、何度やられても絶対に心折れない。
 守られてるだけじゃなくて、自分で頑張ろうとする伊織くんは、私にとってヒーローだったもの。

 ふふっ、懐かしいなあ。
 あの頃私は、そんな伊織くんのことが──

「あっ……」
「どうした、華恋?」
「な、なんでもないよ。あはは……」

 咄嗟に笑って誤魔化したけど、心臓が凄くドキドキしてて。伊織くんのことを直視できずに、目を反らす。

 なんで……どうして気づいちゃったんだろう?
 伊織くんと香織ちゃん、どっちか選ぶよう言われてたけど……。
 答え、出ちゃったかも。
< 24 / 29 >

この作品をシェア

pagetop