我が家の二人の王子様は、私のことを溺愛しすぎ

最終話  我が家の二人の王子様

 仲良しだった幼馴染みの、香織ちゃんと伊織くん。
 二人が引っ越して離ればなれになって、だけど再会して一緒に暮らすことになって、好きだって言われて。
 そして伊織くんは、私の彼氏に。
 本当、ビックリする事の連続だよね。

 香織ちゃんにはなんて報告したらいいか分からなかったけど、あの後公園から帰ったきた私達を見て悟ったみたいに、笑顔で「おめでとう」って言ってくれたの。

 ありがとう、香織ちゃん。
 結局選ぶことはできなかったけど、香織ちゃんに好きになってもらえて、私も幸せだよ。

 そんなわけで、香織ちゃんにも認められて、伊織くんとのカレカノ生活がスタートしたわけだけど……。

「ふふっ。華恋~、今日も可愛い~♡」
「わわっ!? か、香織ちゃん、恥ずかしいよ」
「むう。華恋は私に、ギュッてされるのがイヤなの?」
「ううん、イヤじゃないけど……」
「それじゃあいいじゃない。それっ!」

 さらに力いっぱい、ムギュ~って抱きしてめくる香織ちゃん。
 あわわっ、このまま抱きしめられてたら、何だかおかしくなりそう!

 伊織くんとカレカノになった次の日の朝の、自宅のリビング。
 香織ちゃんはまるで犬や猫を撫でくりまわすように、私を抱きしめて頭や頬を撫でてくる。

 キッキンではお母さんが朝ご飯の準備をしてるのに、こんな所を見られたら恥ずかしい。

 けどお母さんよりも大変なのが、伊織くんだよ。
 すぐ横で私達のやり取りを見ていたんだけど、だんだんと顔が不機嫌になってきたかと思うと、近づいてきて香織ちゃんから私をベリッと引き剥がした。

「いい加減にしろ! 華恋は俺の彼女だぞ!」
「い、伊織くん。それ、あんまり音声で言っちゃ……」
「あ、ごめん。けどさあ……」

 お母さんのいるキッチンの方を見た後、ジトッとした目で香織ちゃんを見る伊織くん。
 私達が付き合いはじめたことは、お父さんやお母さんにはしばらくはナイショにしておこうってなったんだけど。
 香織ちゃんの過剰なスキンシップを見て、伊織くんは我慢できなくなったみたい。

「なあ香織。俺達のこと認めてくれたんだよな? まさか華恋のこと、奪い取るつもりじゃないだろうな?」
「まさか。いつまでもウジウジ引きずって、二人のを幸せを邪魔したりはしないよ。華恋が伊織を選んだのなら、私は潔く身を引くよ」
「香織ちゃん……」

 私はギュッと胸が締め付けられたけど、伊織くんは不満そうな目をしている。

「ならどうしてベタベタしてるんだよ? しかも前より、スキンシップ激しくなってないか?」
「決まってるじゃない。考えてみなよ。このままいけば、将来アンタと華恋は結婚するでしょ」

 け、結婚!?

 そんな、気が早いよ。
 ああっ、でも元々そんな約束してたし、だけどカレカノになるだけでも大変だったのに、急にそんな事を言われてもなんて言えばいいのか分からない。
 すると香織ちゃんは、さらにとんでもない事を言い出した。

「アンタと結婚するってことはだよ。華恋は私の、義妹になるわけじゃない。だったら義姉として、仲良くしなきゃダメじゃない。ふふ、華恋~、お姉ちゃんがたっぷりしっかり可愛がってあげるからね♡」
「ええーっ!?」
「お前、何が身を引くだ。全然諦めてないじゃないか!」
「いいじゃない。旦那より仲良しの義姉がいたって。ねえ華恋♡」

 ねえって言われても……。
 ああ、でもこの様子だと本当に、香織ちゃんは溺愛をやめるつもりは無いみたい。

 ポカンとする私に、香織ちゃんはまたくっついてきたけど、それに怒ったのか反対側から伊織くんも私を引っ張った。

「ベタベタくっつくな! 華恋の彼氏は俺だ!」
「むう、いいじゃないちょっとくらい。一緒にお風呂に入ったりパジャマパーティーをしたり、伊織にはできないことをして、華恋をたっぷり可愛がるんだから!」
「ふざけるな! ……華恋はどうなんだ。香織よりも、俺とイチャつきたいよな? 俺、華恋のこと大切にするよ」
「なに言ってるの。私に可愛がられたいよね?」
「ふ、二人とも落ち着いてー!」

 両サイドから腕を引っ張られて、左右の耳にそれぞれ甘い声をぶつけられる。
 ま、待って。私のために争わないで。
 言葉もスキンシップも甘すぎて、心が糖尿病になっちゃうよー!

 朝から過剰すぎる愛情を注がれて、頭も心も爆発寸前。
 どうやら我が家の二人の王子様からの溺愛は、まだまだ終わらないみたい。

 だけどそんな私を好きすぎる伊織くんと香織ちゃんのことが、私も大好き。
 いつまでも三人で、仲良くいられますように。



 了
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