春待月の一夜のこと
「ところでお前、午後からのプレゼンで使う資料、ちゃんと出来てるのか?」

「そんなの、金曜の内に仕上げちゃいましたよ。でなきゃ気になって、同窓会どころじゃないですから」


そしてこの部下は、スイッチが入ると仕事が出来る部下でもある。全くもって頼もしい。


「そうか。なら、昼まで外回り行けるな」

「うわあ……ハードワーク」

「普通だろうが」


岡嶋はぐいっと残りのコーヒーを飲み干すと、缶をゴミ箱に捨てて歩き出す。その途中、思い出したように立ち止まると


「そういやお前、本当にコーヒーの道具、いるんだろうな。持って来てからやっぱりいらないなんて言われても困るんだからな」


岡嶋が振り返って問いかける。
先ほどの岡嶋同様、コーヒーを一息に飲み干そうとしていた田辺は、一旦缶から口を離して「いりますいります」と答える。


「あっ、一応お断りしておくんですけど、俺はそれ貰ったら速攻で横流しする予定です」

「……正直過ぎるにも程があるだろ」


それから、言い方にも気をつけろと言いたい。なんだ“横流し”って、人に譲るとかでいいだろう。
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