春待月の一夜のこと

7 幼馴染みの証言によると

目覚ましが鳴らずとも目が覚める。休日だというのに、仕事に行く時と変わらない時間帯に目が覚める。
正確過ぎる体内時計を恨みながら、せっかくだからもうひと眠りと寝返りを打って、岡嶋 雅功(おかじま まさとし)は飛び起きた。


「なっ……んで…………」


自分しかいないはずのベッドに、もう一人誰かが寝ている。しかもそれは知った顔で、岡嶋が驚きで勢いよく身を起こそうとも、我関せずといった感じで大変気持ちよさそうに寝息を立てている。
そういえば昔から、一度眠るとちょっとやそっとでは起きない質ではあった。

あまりまじまじと寝顔を見るのもどうかと思い直し、岡嶋は視線を外して頭を抱える。
何が一体どうなって、こんなことになっているのか。
思い出せるのは昨日の夜、いつものごとくアポなし訪問、というかアポとほぼ同時の訪問を受けたこと――。


ピロンとメッセージの受信を知らせる音が鳴ったので、岡嶋はテレビから視線を外してテーブルの上のスマートフォンを取り上げる。
メッセージはとても簡潔で、“今日行ってもいい?”という訪問のお伺いを立てるもの。
しかし岡嶋がそのメッセージに返信を打つより先に、今度はピンポーンとインターホンの音が響いた。玄関のドアを開けるとそこには、メッセージの送信者が立っている。
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