春待月の一夜のこと
――そこから何度か「早く飲め」と島田を急かし、その度に「はいはい」と適当な返事をもらった覚えはあるのだが、その後何がどうしてこうなったのかは、全くもって記憶がない。
なぜ島田と一緒にベッドで寝ているのか。そもそも、ソファーで寝るつもりだった自分がなぜベッドにいるのか。

なぜだ、どうしてだ……何がどうしてこうなった!?と岡嶋が頭を抱える横で、すやすやと寝息を立てていた島田が「んん……」と身じろぎする。
その声と動きにつられて顔を上げると、島田が薄目を開けていた。


「…………」


されど何も言わずじっと岡嶋を見つめているのは、おそらくまだ寝ぼけているから。
そこで我に返った岡嶋も、この隙にベッドから降りた方がいいことに気が付く。

流石に、覚醒した瞬間悲鳴を上げられることはないだろうが、同じベッドで寝ていた説明を求められても困る。
そして答えられないことを悪い意味で受け取って、夜中に忍び込んだなどと誤解されるのはもっと困る。
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