春待月の一夜のこと
「だったらなおさら、当事者であるあたしからちゃんと話を聞いた方がいいんじゃない?雅功くんが思い出せるまで、事細かに説明するってば」

「……それはほんと勘弁してくれ」


島田の口からそれを聞いてしまったが最後、もう立ち直れない気がする。
島田の顔なんて絶対に見られないし、島田の両親の顔も、自分の親の顔さえ見られなくなる。

というかたぶん、事情を知れば自分の親に至っては、般若と化すような気がする。
島田の親はどうだろう……信頼していた年上の幼馴染みが娘に手を出したと知ったら、しかも状況的には寝込みを襲ったような形であると知ったら……泣くだろうか、それとも怒り心頭だろうか。


「……勘当されて殴られて社会的に死んだ挙句に引きこもりになって孤独死する未来が見える」

「雅功くんって、いつからそんなネガティブ人間になったの?」


絶望感で地の底まで沈んでしまいそうな岡嶋と、呆れたような顔で首を傾げる島田。


「そんな心配しなくても大丈夫だよ。あたしには、みんな笑顔のハッピーエンドがちゃんと見えてるから!」


ぽんぽんと慰めるように肩を叩かれて、岡嶋はそっと顔を上げる。笑顔の島田が続けて言うには


「雅功くんがちゃんと責任取ってあたしと結婚してくれたら、なんの問題もないよ。どっちの家族もみんな笑顔のハッピーエンド」
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