春待月の一夜のこと
「チーズか……」


本当は食パンにチーズを乗せて焼こうと思っていたのだが、変更して、食パンの方はシンプルにマーガリンだけで焼くことにする。
器に卵を割り入れて箸で溶いたら、バターを熱したフライパンに流し入れる。

バターたっぷり、チーズもたっぷりが島田の好みだ。
若い胃袋が羨ましい、なんて思いながら島田の分を作り上げて、それから岡嶋は自分用に、バターもチーズも少なめのものをもう一つ作る。

それを皿の端に盛って、野菜室から適当に見繕った葉物野菜をサラダとして脇の方に添えたら、焼きあがった食パンを空いたスペースに乗せる。
スープも、コンソメとウインナーと残り野菜でぱぱっと作っていたら


「雅功くんは相変わらずの料理上手だね。もうカフェのモーニングじゃん」


いつの間にか洗面所から戻ってきたらしい島田が、斜め後ろに立っていた。


「別に、気取ってるわけじゃないからな。この方が洗い物が少なくて済むからこうしてるだけだ」

「わかってるって。でもほんのちょっとは、凝りたくなっちゃったとこもあるでしょ?」

「……まあ、ちょっとは」


ぼそぼそと答えたら、島田がくすりと笑った。


「雅功くん、凝り性だもんね」


そこは否定出来ないので、岡嶋は反論もなくスープを仕上げると、手持ち無沙汰に立っている島田の前に、先に出来上がっていた皿を二つ置いた。
< 133 / 409 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop