春待月の一夜のこと
「この間作ってくれたガパオライス、あれなんか写真見た瞬間ものすっごい感激してたよ。お家で作れるものだったの!?って」

「家でも作れる簡単レシピとか、結構ネットで出回ってるだろ……」

「うちのお母さん、スマホはただの連絡手段であって、ネットとか出来ないタイプの人だから。写真の撮り方と送り方だって、最近やっと覚えたんだよ?」


言われてみれば確かに、島田母はあまり機械物の扱いが得意ではない印象がある。
岡嶋が自分の母親から聞いて驚いた話で言うと、洗濯機を新調した時、二年半ほど説明書が手放せなかったらしい。


「まあでも、お母さんの撮る写真、全然ピント合ってないんだけどね。あと、たまに写真撮ってるつもりで動画撮ってる時もあるし」

「……なるほど」


ネットでレシピ検索自体は簡単だと思うのだが、色々いじっている間におかしなサイトにでもアクセスしてしまったら大変なので、下手に触らせない方がいいのかもしれない。


「さてと、じゃあいただきまーす」


写真を送り終わったのか、島田がスマートフォンを置いて手を合わせる。
岡嶋もそれに倣ったあとで、無音の中の食事もなんだなと、とりあえずテレビをつけた。
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