春待月の一夜のこと
「なんか観たいのあったら変えていいからな」

「この時間に観たい番組なんてないよ。どうせだったら映画かなにか……あっ、このドラマ映画化するんだ」


トーストを咥えたまま立ち上がろうとした島田は、“映画化決定!”と画面に表示された文字に動きを止める。
そのあとで画面に映ったのは主演らしい女優で、笑顔で映画の宣伝をしている。

どうやら以前放送されていたドラマを映画化したものらしく、岡嶋はドラマ自体を観たことはないが、CMで入る予告は何度か目にしたことがあるので、そのタイトルには聞き覚えがあった。
予告を見た岡嶋が認識している話の内容は、高校生が主役の青春恋愛ドラマである。


「ねえ雅功くん、公開したらこの映画観に行こうよ」


バシバシと岡嶋の腕を叩きながら、島田がテレビ画面を指差す。


「……いや俺、このドラマ観てないし」

「じゃあ一話から一気見しよう。あたしも付き合ってあげるから」


高校生が青春したり恋愛したりする話を島田と?一話から一気見?
むず痒くなって黙って観ていられる気がしない。
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