春待月の一夜のこと
「へー、旨そうだな」

「でしょ?今度食べに行こうよ」


スマートフォンをしまいながら目を輝かせる島田に、岡嶋は再び「友達と行ったらいいだろ」と返す。


「映画もオムライスも、島田はそういうところに一回りも年が離れた俺と行くことに抵抗はないのか?」


オムライスの店は飲み屋街にあるとのことなのでいいとしても、映画、特に恋愛映画を一緒に観に行くことに関しては、少しくらい抵抗を感じて欲しい。


「なんで?一緒に行くのに年齢なんて関係ないじゃん。逆に雅功くんは、年齢を気にし過ぎ」

「そりゃ、一つか二つなら俺も気にしないけど、一回りだぞ?」

「一回りなんてそんなに変わらなくない?」

「一回りはだいぶ違う」


時折、島田との会話にジェネレーションギャップを感じることがあるので、岡嶋としてはここは強く断言しておきたいところである。


「今時そんなに年の差を気にする人なんかいないよ?うちの大学の講師の人なんて、雅功くんより更に一回り年上だけど、高校生の娘さんと遊園地行ったり、ショッピングセンターに服を買いに行ったりするんだってよ。それも、お母さんは抜きで、父と娘の二人だけで」

「家族はまた別だろ」

「雅功くんは頭が固いね」


これ見よがしにため息をつかれると、岡嶋は思わず言葉に詰まる。
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