春待月の一夜のこと
「ていうかさ、よく考えたらあたしと雅功くんだって、家族みたいなものじゃん。あたしが生まれた時から一緒にいるんだよ?なんなら、あたしがお母さんのお腹にいた時から会ってるでしょ」

「……それは会ってるって言うのか?」


でもまあ確かに、親同士の仲が良く、家も近くにあるので、幼い頃から島田とは一緒だった。
島田がまだ母親のお腹の中にいた頃に、岡嶋は何度かお腹を触らせてもらったこともある。


「顔は合わせていなくても、雅功くんはあたしの存在を感じていたわけなんだから、それはもう会ってるのと変わらないよ」


なるほどなと思わなくもないような、やっぱり何か違うんじゃないかと思わなくもないような……。
何とも言えない気持ちでトーストを齧っていると、「それに」と島田が続ける。


「仮に今は家族じゃなくても、どうせこの先家族になるんだから、同じことだよ」


でしょ?と笑顔を向けられて、岡嶋は固まる。
トーストを口に咥えたまま、「……ん?」と首を傾げると、島田は笑顔のままで言った。
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