春待月の一夜のこと
「ああ……コーヒーと牛乳とお砂糖が混じり合ったような匂い」

「……そりゃそうだろうな」


むしろそれ以外の香りがしていたら問題だ。


「なんか甘い物ないの?コーヒーに合いそうな食後のおやつ」

「アーモンドチョコ、ザラメせんべい、それからクッキーだな」

「じゃあクッキーで。あと、ザラメせんべいはないんじゃない?コーヒーだよ」

「合わせてみたら意外にいいかもしれないだろ」


岡嶋は普段そんなにお菓子の類を食べないから、これまた島田用に用意してあるお菓子の中から、バニラクッキーの箱を取り出す。
それと自分のカップを持ってソファーに向かうと、島田も後ろをついてきた。

ずっとつけっぱなしになっているテレビを眺めながら、封を切ったクッキーを食べ、コーヒーを飲む。
なんとも平和な休日の朝だな……なんて岡嶋が気を緩めていたところで


「ところで雅功くん、混乱し過ぎて大爆発寸前だった脳内は落ち着いた?新婚旅行の話をしてもいい?」


とんでもない爆弾が落とされて、平和な休日の朝が崩壊した。
そして岡嶋は、吹き出しそうになったコーヒーを慌てて飲み込んだことで、激しくむせ返る。
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