春待月の一夜のこと
「おやつならさっき、クッキー食べただろ」

「あれは食後のコーヒーのお供だから」


それは今強請っているおやつとは何が違うというのか。どうせ訊いたところでまた小癪な言い分が返ってきそうなので、岡嶋は深くため息をつくに留めた。


「とりあえずほら、出来たから自分の分持っていけ。ああ、待て、最後にごま油を」


島田が丼に手を伸ばしたところで待ったをかけ、岡嶋は危うく忘れるところだったごま油を最後にひと回しかける。
途端にごま油の香りがぶわっと広がって、二人の食欲が増進される。


「やっぱり中華はごま油だよね。お母さんにも伝えとこ」


先ほど撮っていた写真と一緒に、ごま油の重要性についてのメッセージも送ったようだが、それを送られた島田母は一体どんな反応をするのか。
岡嶋だったら、突然そんなメッセージが送られて来たら反応に困る。


「あっ、そうだ雅功くん。あたしおやつはあれがいいなー、ふかまんの新作!」

「ああ、あんバターまんな」

「そうそれ!」
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