春待月の一夜のこと
「あ、見てみて、お母さんが早速やってみたって」


島田が向けてくるスマートフォンの画面に視線をやると、現在岡嶋達の目の前にあるのとほとんど同じ見た目の物が写真に写っていた。


「インスタントとレトルトを合わせただけなのに、何だか凄く手の込んだものを作ったような気分になるってさ」

「そりゃよかった。冷凍うどんにレトルトカレーかけるのもお勧めだぞ」

「えっと、冷凍うどん……」


とんでもない速さで指を動かす島田から視線を外して、岡嶋は再びテレビを見る。
先ほど作っていた料理がどうやら完成したようで、エプロン姿の俳優が、今度はその料理に関するエピソードを語っていた。

なんでも、奥さんのために始めて作った料理なのだとか。
そういえばこの俳優は大ファンだった元アイドルと結婚していて、今では芸能界きってのおしどり夫婦として有名だった。


「へー、結婚式はハワイでしたんだ。いいなー」


いつの間にか母親にメッセージを送り終わった島田も、一緒になってテレビを見ている。
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