春待月の一夜のこと
そんな初めての対面のあと二人は、お互いの母親に連れられる形で互いの家に遊びに行き、仲を深めていった。
喋れもしない赤ちゃんだった島田は、やがてハイハイや掴まり立ちをするようになり、意味をなさない音ばかり口にしていたのが、気付けば意味を持った単語を、そしてあっという間に会話が出来るようなり、岡嶋相手におままごとをするほどに成長していた。


「まさにいは、おとうさんね。みさは、おねえちゃん!」

「……お姉ちゃん?お母さんじゃなく?」

「みさはおかあさんよりおねえちゃんがいいの!こっちが、おかあさん」


“お母さん”と島田が出して来たのは、お気に入りのクマのぬいぐるみ。配役的にそのクマは、岡嶋の奥さんということになるので、岡嶋は難しい顔でクマを見つめる。
幾度となく岡嶋は島田のおままごとに付き合ってきたが、そのクマはお母さんの時もあれば妹の時もあり、赤ちゃんの時もあったかと思えば、お兄ちゃんにもなる、なんとも万能なクマだった。
そんないつも一緒だったクマが、ベッドの端っこに飾られて連れ歩かれることがなくなった頃、島田のおままごとブームが去った。
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