春待月の一夜のこと
その頃にはもう島田は小学生だったので、次に流行ったのはオシャレ、そして少女漫画。
母親のメイク道具をこっそり使ってメイクをしてみたり、友達同士でヘアアレンジをしたり、岡嶋の家に遊びに来る時も、持ってくるのはクマのぬいぐるみではなく少女漫画や子供向けファッション雑誌に変わった。


「ねえねえまさにい、デートしに行こう!」

「ぶっふ!!?」


突然のお誘いに、飲んでいたオレンジジュースを吹き出して、母親に小言と一緒に布巾を投げ渡されるなんてこともあった。


「で、でーと?……意味わかって言ってるのか?」

「あたりまえじゃん!ほらこういうの」


見せられたのは、最近買ってもらったばかりだという漫画の新巻。話の内容としては、付き合ったばかりの二人が、初デートに行く回らしい。


「友達の愛ちゃんがね、休みの日にカレシとデートして来たって言うの。そしたら香住ちゃんって友達もね、まだカレシじゃないけど、好きな人が遊びに行こうって言ってきたから、二人で遊びに行くって言ってたの。友達の中であたしだけ、デートしたことないんだよ!」
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