春待月の一夜のこと
そんな風にして赤ちゃんの頃から成長を見守ってきた存在が、今現在、責任取ってくれるよね?と迫ってきている。
“美沙をよろしくね”と島田母に頼まれたあの時から、島田を始めて抱っこしたあの瞬間から、何があっても守ろうと固く心に誓ったはずだったのに、一体自分は何をしているのか。
というか、何をしたのかを思い出せないことがまた許し難い。


「……なんだろう、昔のことが走馬灯のように頭に…………」

「え、なんで?」


突然の呟きに困惑する島田だが、何故と訊かれても岡嶋にも説明のしようがない。


「赤ちゃんの頃の何もないところを見て急に笑い出す島田とか、ランドセル背負ってるませガキ過ぎる島田とか、セーラー服着てるちょっとつんけんした島田とか、ブレザー着てスカート丈と前髪の具合ばっかり気にしてる島田とか……」

「あたしのことばっかりじゃん。もしかして、遠回しにプロポーズしてる?やっと覚悟決まった感じ?」


これをプロポーズと受け取れるとは、なんてポジティブな思考をしているんだと内心感心する。
そういえば島田は小学生の時の通信簿に、“物事の明るい面をとらえることが出来るのは素晴らしい長所だと思います”と担任からコメントを書かれていたことがあった。
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