春待月の一夜のこと
「別に珍しいものでもないんだから、撮らなくてもいいだろ。スーパーで普通に売ってるぞ」

「おやつはこれだよっていうただの報告だからいいの。ちょっと雅功くん半分に割って、中が見えるように持ってて」


早く、冷めちゃう。と急かされて、岡嶋は仕方なく中華まんを一つ手に取る。しかしこれがとても熱い。


「ぶれちゃうから動かさないで」

「無茶言うな!熱いんだよ」

「じゃあ断面見えるように、いい感じに皿に置いて」

「……難しいことを簡単に」


岡嶋はぶつぶつと文句を言いながら、半分に割った中華まんをどうにか断面が見えるように皿に置く。それを島田がまた何枚か写真に収め、母親に送信したところでようやくおやつタイムとなった。


「雅功くんが苦戦しながら半分にしてた時から思ってたけど、この新作はとんでもないね。断面の破壊力が凄い」


島田を感心させる新作中華まんは、あんバターの名の通り、ふかふかの皮に包まれたあんこの中にたっぷりのバターが入っている。それが電子レンジの熱で溶かされて、半分に割った途端とろけたバターが溢れ出してくるのだ。
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