春待月の一夜のこと
「……よくないって言ったら、待ってくれるのか?」


念のため確認してみたら


「その場合は、いい加減にしろと怒ります」


という答えが返ってきた。つまり、もう時間は貰えないらしい。


「……急に、あんバターまんの味がしなくなった」


さっきまでは、美味しくいただけていたというのに。


「裁判所で判決言い渡される時って、こんな気持ちなんだろうか……」

「ちょっと大げさじゃない?」

「むしろ島田は軽過ぎるだろ。人生が大きく変わるかもしれない話をこれからするんだぞ」

「まあ、それはそうかもだけど……」


そこで考えるようにちょっと間を空けて、「でもさ」と島田が続ける。


「この先関係性が変わったって、一緒にいること自体は変わらないんだから、そんなの今までと何も変わらないのと一緒じゃない?」


ああ、若いな……と、甘いな……と、そう思った。関係性が変われば、今までと全く一緒とはいかないものだ。
当人達が望まざろうとも、変わってしまうことだってある。
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