春待月の一夜のこと
今度はふてくされてしまった島田は、膝に下ろしたクッションを抱きしめる。
ソファーの上に膝を立て、自分の体と膝の間にクッションを挟んで抱きしめるその様子は、幼い頃とまるで変わらない。

こんな時は、お気に入りのアニメをかけてやるか、好物のお菓子を出してやるか、生クリームをこんもり乗せたココアを作ってやるとたちまち機嫌が直っていたのだが、今でもそのうちのどれか一つくらいは効くのだろうか。
一つ目の場合は、今ならアニメではなくドラマか映画をかけた方がいいだろうが。

ちらりと時計に視線を向けて時間を確認した岡嶋は、そろそろ島田を送り届けなければ、流れでもう一泊コースに突入しそうな気配を感じる。
しかしどうなのだろう、肝心の問題が何も解決しないまま、島田を送り届けてしまってもいいものだろうか。

岡嶋は一人でゆっくり昨日のことを思い出す時間を作れるが、岡嶋が悠長にそんなことをしている間に、島田が両親に話をしてしまう可能性は充分に考えられる。というか、その可能性大だ。
どうしたものかと悩む岡嶋に、「何悩んでんの?」と島田からの問いかけ。
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