春待月の一夜のこと
「んー……」


カフェオレは我慢してもいいが、せっかくお湯も沸かしているのだから何か飲みたい。
何かあったかな……と呟きながら、島田は先ほどあさった棚の中の、飲み物をストックしてある場所を物色する。

岡嶋は飲むものがほぼブラックコーヒーなので、ここに保管してある甘い飲み物は全て島田用である。
その量と種類の豊富さに、思わず島田の口元が緩んだ。


「こっちのカフェラテでもいいか」


その中に見付けた、スティックのカフェラテ。コーヒーに牛乳を注いで作るいつものものより甘さがあるが、まあいいだろう。現在絶賛頭を使っている様子の岡嶋には、きっと糖分が必要だろうし。
カフェラテのスティックを二本取って棚を閉めようとした島田は、そこでふと手を止める。

目に留まったのは、袋入りのココアだった。
昔、島田がまだ小学生だった時、不機嫌そうにしていると岡嶋が作ってくれたのが、生クリームをたっぷり乗せたココアだった。

それでもくさくさした心が晴れずにむくれていると、そこにそっとマシュマロも追加してくれたりして、しかもそこにチョコレートペンで可愛らしいうさぎや猫のイラストが描いてあったりなんかすると、たちまち笑顔になったのを覚えている。
今度はこれを描いて!とお気に入りのアニメのキャラクターを見せて、岡嶋を困らせたのもいい思い出だ。
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