春待月の一夜のこと
家族ではないけれど、家族のように近しい存在。時に家族より、頼ってしまう存在。家族には言えないようなことも、言えてしまうような存在。
素晴らしい点はたくさんあるけれど、難点を上げるとするならば、岡嶋のように鈍感だと、近過ぎて気が付かないことが、無意識に気付かないように押し込んでしまうことがあることだろうか。


「雅功くんは、ほんと考え過ぎ」


押してもダメなら引いてみろとはよく聞くが、ここまで押してしまったらもう逆に引き方がわからない。だったらもう、押せるところまで押すしかないだろう。


「別に鬱陶しくないよ、雅功くんだったら。むしろ、あたしが男の人と二人っきりだと複雑だなって思ってくれるのは、嬉しい」

「……なんでだ?」


わけがわからないと首を傾げる岡嶋に、島田は苦笑する。
岡嶋は顔も性格も悪くないと思うのにちっとも浮いた噂を聞かないのは、もしかしてこの鈍感さのせいだろうか。だとしたら、この鈍感さも島田にとってはある意味でありがたい。

ライバルを生まないための障壁となってくれているのだから。
まあ、それにしたっていい加減気づけよ何年一緒にいると思っているんだとは、流石に思うけれど。
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