春待月の一夜のこと
真帆は田辺という男を知らな過ぎるから、その言い分はどこまで信じるに値するのかがわからない。
高校生の頃の田辺は、どちらかというとクラスの中心にいるような人物で、同じような系統のメンバーと一緒に、真面目に授業を受けてみたり、ふざけて怒られてみたり、行事の時だけ張りきってみたりして過ごしていた印象だ。
それだって、クラスメイトの一人として三年間一緒に過ごして知り得た情報というだけで、当時個人的にお喋りするほど仲が良かったわけではない真帆は、それ以上のことを何も知らない。
田辺は何が好きで、何が嫌いで、どういう性格なのかも、何も。
「ああ、ダメだ……頭が痛い」
そして重要なことは何も思い出せない。
引いていた頭痛が再発したことで、真帆は一旦思い出すのを諦めた。そしてなんとなしに、持っていたタオルに顔を埋める。
さっきも思ったけど、いい匂いだな……柔軟剤かな……結構好きな匂い……なんて必要以上にタオルに顔を埋めていた真帆は、ハッと我に返って勢いよく顔を上げる。
一体自分は他人様の家で何をしているんだ変態か!と心の中で叫びながら恥ずかしくなっていると、そのタイミングでコンコンとドアがノックされ、真帆は飛び上がった。
高校生の頃の田辺は、どちらかというとクラスの中心にいるような人物で、同じような系統のメンバーと一緒に、真面目に授業を受けてみたり、ふざけて怒られてみたり、行事の時だけ張りきってみたりして過ごしていた印象だ。
それだって、クラスメイトの一人として三年間一緒に過ごして知り得た情報というだけで、当時個人的にお喋りするほど仲が良かったわけではない真帆は、それ以上のことを何も知らない。
田辺は何が好きで、何が嫌いで、どういう性格なのかも、何も。
「ああ、ダメだ……頭が痛い」
そして重要なことは何も思い出せない。
引いていた頭痛が再発したことで、真帆は一旦思い出すのを諦めた。そしてなんとなしに、持っていたタオルに顔を埋める。
さっきも思ったけど、いい匂いだな……柔軟剤かな……結構好きな匂い……なんて必要以上にタオルに顔を埋めていた真帆は、ハッと我に返って勢いよく顔を上げる。
一体自分は他人様の家で何をしているんだ変態か!と心の中で叫びながら恥ずかしくなっていると、そのタイミングでコンコンとドアがノックされ、真帆は飛び上がった。