春待月の一夜のこと
「おまっ……!ドアを閉めろ!!」


丁度岡嶋が通りかかった時、島田は下を脱いでいるところだったのだが、ぶかぶかのTシャツで下着は見えていないはずなのにこの反応。
というかこの場合、見られて恥ずかしがるのは島田の方ではなかろうか。


「昨日もっと凄いことしたのに、今更こんなので照れるの?」


耳の縁の赤みが首元まで広がって、岡嶋は逃げるように足早に部屋の前を通り過ぎる。その際、ドアを閉めていくことは忘れない。


「うんうん、これは中々いい兆候とみた」


嬉しそうにそう呟いて、島田はTシャツも脱いでいく。
これまでも何度も、岡嶋に意識してもらおうと際どい格好で目の前をうろちょろしたことはあったが、今日ほどの反応を得られたことはなかった。やはり、思い切ってみて正解だったと、島田は心の中で呟く。
着替えを終えて寝室から出ると、岡嶋が車のキーを手に待っていた。


「忘れ物してないか」

「もししてたら取りに来るから平気」

「……そういう問題じゃないだろ」


呆れる岡嶋が玄関に向かったので、島田もそれに続く。先に靴を履いて外に出た岡嶋は、ドアを抑えて島田が出てくるのを待つ。
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