春待月の一夜のこと
「私は、オニオンスープでいい」

「了解。デザートは?」


田辺が新たに画面に表示させたデザートメニューには、チョコレートケーキ、バニラアイス、季節のフルーツを使ったシャーベット、チーズケーキが載っていた。


「俺はチョコレートケーキにしようかな。チョコレートがビターな感じでくどくなくて美味しいって、口コミに書いてた」

「へー、そう」


気のない返事をしながら、真帆はシャーベットかチーズケーキかで迷っていた。
オムライスがデミグラスソースで濃厚そうなので、食後はシャーベットでさっぱりしたい気持ちもあるのだが、田辺が向かいでケーキを食べていたら、自分もケーキにすればよかったと思う気がしてならない。
散々迷った末に真帆は、向かい側でケーキを食べる田辺を恨めしげに見つめる自分の姿を払拭することが出来ず、チーズケーキを頼むことにした。


「はい、じゃあ注文っと。ここね、一回食べてみたかったんだよね。デリバリーもやっててよかった。あっ、届くまでジェンガの続きでもする?」

「……ていうかちょっと待って、え、今気が付いたんだけど、もしかして私、田辺くんとランチする流れになってる……?」

「気付くの遅くない?」
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