春待月の一夜のこと
胸がなんだかモヤモヤする嫌な感じのまま帰宅した岡嶋は、買ってきた物を黙々と所定の場所にしまっていく。
こんな気分の時には、動きを止めると色んなことをぐるぐると考え過ぎてしまうので、そうならないために動き続けていた方がいい。

さながら動きを止めたら死んでしまうマグロのごとく、岡嶋は買ってきた物を片付け終わると、シンクを磨いてみたり、コンロや電子レンジの掃除をしてみたり、遂には本日二度目となるトイレとお風呂の掃除にまで手を出す。
そうこうしているうちにすっかり外が暗くなったので、磨き上げた浴槽に湯を張りながら、夕飯の支度に取り掛かる。

こんな時は、夕飯も手の込んだものを作りがちだ。
久しぶりにハンバーグでも作ろうかと、本日買ってきたばかりのひき肉と、その他の材料を冷蔵庫から取り出していると、インターホンが鳴った。

なんだか物凄く嫌な予感がしたが、その予感が当たっていれば無視するわけにはいかないので、岡嶋は玄関へと向かう。
ドアを開けると案の定、そこには島田が立っていた。
< 262 / 409 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop