春待月の一夜のこと
「ほい、これ、うちのお母さんから。なんかね、おでん作り過ぎちゃったんだって。だからお裾分け」
差し出されたのは、紙袋に入れられたどでかいタッパー。
「……でかくないか?」
思わずそう訊いてしまうと
「家で一番でっかいタッパーって、お母さんがキッチンをひっくり返す勢いで探してたからね。だって雅功くんはいっぱい食べるでしょ?って言ってた」
有難いことだが、いつまでも育ち盛りの男の子だと思われていては困ってしまう。
「そのタッパー、大き過ぎて家じゃ全然使わないやつだから、返すのいつでもいいよ」
「おばさんに、ありがとうって忘れずに伝えてくれ」
はいはーい、と軽い返事の島田が、珍しく「それじゃあね」と手を振る。いつもならば、お裾分けを届けたついでに岡嶋宅に上がり込み、そのまま夕飯まで食べていくのがお決まりのパターンだったのだが……。
「帰るのか?」
岡嶋が帰れと言っても帰らない島田が、用件だけ済ませて帰ろうとしていることに驚いて、ついそんなふうに訊いてしまう。
それを受けて、島田はふふっと楽しげに笑って
「なに、寂しいの?」
なんて質問返し。
差し出されたのは、紙袋に入れられたどでかいタッパー。
「……でかくないか?」
思わずそう訊いてしまうと
「家で一番でっかいタッパーって、お母さんがキッチンをひっくり返す勢いで探してたからね。だって雅功くんはいっぱい食べるでしょ?って言ってた」
有難いことだが、いつまでも育ち盛りの男の子だと思われていては困ってしまう。
「そのタッパー、大き過ぎて家じゃ全然使わないやつだから、返すのいつでもいいよ」
「おばさんに、ありがとうって忘れずに伝えてくれ」
はいはーい、と軽い返事の島田が、珍しく「それじゃあね」と手を振る。いつもならば、お裾分けを届けたついでに岡嶋宅に上がり込み、そのまま夕飯まで食べていくのがお決まりのパターンだったのだが……。
「帰るのか?」
岡嶋が帰れと言っても帰らない島田が、用件だけ済ませて帰ろうとしていることに驚いて、ついそんなふうに訊いてしまう。
それを受けて、島田はふふっと楽しげに笑って
「なに、寂しいの?」
なんて質問返し。