春待月の一夜のこと
「それはやっぱり、直接訊いた方がよくないですか?ていうか、その方が早いですよ。岡嶋さんが一人でぐだぐだ悩むより」

「……お前に、さも簡単なことのように言われると物凄く腹が立つ」

「うわぁ……俺こんなに真面目にアドバイスしてるのに酷くないですか?」


もうこうなったら飲んでやる!なんて言って湯呑を手にしたが、熱すぎてぐいっと飲むことが出来ず息を吹きかけている姿はちょっぴり間抜けだ。そんなところが田辺の憎めないところなのだが、言ったらあとが面倒なので絶対に言うつもりはない。
岡嶋も自分の湯呑を手にすると、息を吹きかけてから、火傷をしないようゆっくりと一口。

田辺の言うことに納得するのは癪だが、確かに島田に訊くのが何よりも早い解決策であることは確かだ。
まあ、訊けるものならこんなに思い悩んでもいないのだが。


「……お前がもし同じ状況だったら、田中さんに訊くか?」

「ん、俺ですか?まあ、そうですね。訊いたところで、きっと田中さんは“関係ないでしょ!”とか言って隠そうとするんですよ。でも田中さんって、すぐ顔に出るって言うか、態度に出るって言うか、とにかくわかりやすいので、自分で思ってるほど隠しきれてないんですよね。そこがまた見ていて面白いので、俺はそれを見るためにあえて訊きます!」
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