春待月の一夜のこと
不機嫌そうな顔で薄っすらと目を開けた男は、しばらく薄目で睨み付けるように真帆を見ていたかと思ったら、「ああ、そっか……」と低い声を漏らして起き上がる。
「……おはよう、元気そうでなによりだね」
その台詞が妙に皮肉っぽく聞こえるのは気のせいだろうか。
とりあえず真帆は、おそるおそる「おはよう……」と返して、欠伸する男の顔を見つめる。
やはり勘違いではない。その顔には見覚えがある。
昨日久しぶりに同窓会で顔を合わせた高校の同級生、田辺 誠也で間違いない。
隣に座っていた友人が、「ねえあれ田辺くんかな?ああ絶対に田辺くんだ!うっそどうしよう……あの頃より更にかっこよくなってる。かっこよさが倍増してる!ああ……結婚するの早まったかも」と騒いでいたので、会話はしていないけれどその場にいたのは覚えている。
高校時代から輪の中心にいるようなタイプだったが、それは大人になっても変わらないようで、常に周りに人がいたため、話しかけにいけるような雰囲気ではなかった。
まあそもそも、真帆とは当時からそんなに関りもなく、同じクラスにいたというだけのうっすい関係性なので、最初から話しかけに行くつもりもなかったけれど。
「……おはよう、元気そうでなによりだね」
その台詞が妙に皮肉っぽく聞こえるのは気のせいだろうか。
とりあえず真帆は、おそるおそる「おはよう……」と返して、欠伸する男の顔を見つめる。
やはり勘違いではない。その顔には見覚えがある。
昨日久しぶりに同窓会で顔を合わせた高校の同級生、田辺 誠也で間違いない。
隣に座っていた友人が、「ねえあれ田辺くんかな?ああ絶対に田辺くんだ!うっそどうしよう……あの頃より更にかっこよくなってる。かっこよさが倍増してる!ああ……結婚するの早まったかも」と騒いでいたので、会話はしていないけれどその場にいたのは覚えている。
高校時代から輪の中心にいるようなタイプだったが、それは大人になっても変わらないようで、常に周りに人がいたため、話しかけにいけるような雰囲気ではなかった。
まあそもそも、真帆とは当時からそんなに関りもなく、同じクラスにいたというだけのうっすい関係性なので、最初から話しかけに行くつもりもなかったけれど。