春待月の一夜のこと
田辺の口から最近よく名前が出てくるようになった人物で、田辺の頬が腫れあがるくらいぶっ叩いた張本人で、もしかしたら田辺と何かあったかもしれない人。
最後の部分に関しては、何となく今の自分と重なる部分もあって、岡嶋は密かに親近感を抱いていた。
それに、田辺に振り回される者同士でもあるし。
「……あの、田辺くんは、……そんなに酷かったですか?顔」
おずおずとした問いかけに、岡嶋はぼんやりする頭で何を訊かれているのかしばし考えてから「ああ……」と答えた。
「まあ、ひどく腫れあがってはいましたけど、殴られるような原因を作ったのはあいつの方でしょ?だったら、自業自得です」
改めてそう伝えたが、今度は先ほどのようには真帆の表情は晴れなかった。浮かない顔のままで、「でも……」と口を開く。
「……やっぱり、叩いたのはよくなかったですよね。しかも、思いっきりいっちゃったし。……怒りに我を忘れてしまったせいで、卵まで忘れて」
「……たまご?」
「ああ、いえ、こっちの話です」
首を傾げる岡嶋に、真帆は慌てたように手を振る。それから、深いため息をついた。
最後の部分に関しては、何となく今の自分と重なる部分もあって、岡嶋は密かに親近感を抱いていた。
それに、田辺に振り回される者同士でもあるし。
「……あの、田辺くんは、……そんなに酷かったですか?顔」
おずおずとした問いかけに、岡嶋はぼんやりする頭で何を訊かれているのかしばし考えてから「ああ……」と答えた。
「まあ、ひどく腫れあがってはいましたけど、殴られるような原因を作ったのはあいつの方でしょ?だったら、自業自得です」
改めてそう伝えたが、今度は先ほどのようには真帆の表情は晴れなかった。浮かない顔のままで、「でも……」と口を開く。
「……やっぱり、叩いたのはよくなかったですよね。しかも、思いっきりいっちゃったし。……怒りに我を忘れてしまったせいで、卵まで忘れて」
「……たまご?」
「ああ、いえ、こっちの話です」
首を傾げる岡嶋に、真帆は慌てたように手を振る。それから、深いため息をついた。