春待月の一夜のこと
いつになく、イライラする。これも、アルコールのせいなのだろうか。
田辺ほどではないにしろ、島田にもマイペースで自由なところはある。それにいくら振り回されようとも、こんなにイライラしたことはなかったのに、今日はその気持ちに流されるように言葉が荒っぽくなるのを止められない。


「……なんで雅功くん、そんな怒って……」

「別に怒ってない。ただ、お前は男がいる飲み会にだって好きに参加して、男と二人で出かけたりしてるのに、俺は飲みに行った先で店員と会話するのもダメって、そんなのはおかしいだろ」


語調が荒いせいで完全に怒っているように見えるが、岡嶋としては、自分の中に湧いている感情は怒りとはまた違う。
ただ、怒って頭に血が上ってしまった時のように、これまでモヤモヤと自分の中に溜まっていたものが、堰を切ったように溢れ出すのは感じる。
アルコールも手伝って、その流れはもう自分でも止められなかった。


「年が近い方が、そりゃ話も合うし一緒にいて楽しいに決まってるよな。……お前にとって俺は、嘘ついてからかって遊ぶのに丁度いい幼馴染みだもんな」
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