春待月の一夜のこと
「……お前、まさかとは思うが、今日一日ずっとそのことを考えていたせいでミスしたんじゃないだろうな」
就業時間中、印刷した資料を手にした田辺が岡嶋の元に頭を下げに来た時、この男にしては珍しいミスだとは思ったのだ。
「そんなこと言ったって、初めての田中さんからのお誘いですよ。話ってなんだろうとか、何着て行こうとか、そもそもどこに行こうとか、そういうの考えちゃうでしょ?」
「そういうのは就業時間外にやれ!!」
すみません……といつになく素直に謝罪を口にする田辺だが、その視線はまたしても明後日の方向を向く。
放っておくと、いつまでもぼーっとしていそうなので、先ほどとは反対に、今度は岡嶋が田辺の腕を掴んだ。
「ほら行くぞ!さっさと終わらせて、考え事の続きは帰ってからやれ」
「そしたら岡嶋さん、付き合ってくれます?」
「なんで俺がお前の考え事に付き合わなきゃいけないんだ」
「俺は岡嶋さんの考え事に付き合ったじゃないですかー」
「お前が勝手にはまってきたんだろ!」
煩い田辺を半ば引きずるようにして、岡嶋は歩く。
就業時間中、印刷した資料を手にした田辺が岡嶋の元に頭を下げに来た時、この男にしては珍しいミスだとは思ったのだ。
「そんなこと言ったって、初めての田中さんからのお誘いですよ。話ってなんだろうとか、何着て行こうとか、そもそもどこに行こうとか、そういうの考えちゃうでしょ?」
「そういうのは就業時間外にやれ!!」
すみません……といつになく素直に謝罪を口にする田辺だが、その視線はまたしても明後日の方向を向く。
放っておくと、いつまでもぼーっとしていそうなので、先ほどとは反対に、今度は岡嶋が田辺の腕を掴んだ。
「ほら行くぞ!さっさと終わらせて、考え事の続きは帰ってからやれ」
「そしたら岡嶋さん、付き合ってくれます?」
「なんで俺がお前の考え事に付き合わなきゃいけないんだ」
「俺は岡嶋さんの考え事に付き合ったじゃないですかー」
「お前が勝手にはまってきたんだろ!」
煩い田辺を半ば引きずるようにして、岡嶋は歩く。