春待月の一夜のこと
そういえば最初に貰った地図に、ステージで行われるイベントのタイムスケジュールも載っていた。
思い出して地図を広げてみると、地元の大学の軽音楽サークルの演奏がそろそろだった。


「田中ちゃんも行ってみるー?」


タイムスケジュールを眺めながらしばし考えた末、真帆は地図をしまいながら首を横に振った。


「やめておきます。勝手にいなくなるなって誰かさんに言われてるし」


そう返せば、マスターが「ふーん」と意味ありげな相槌を打ちながら笑みを浮かべる。


「……なんですか」

「ちゃんと待っててあげるんだなーと思って」

「……言っておきますけど、別に深い意味はないですからね」

「深い意味って言うとー?」


にっこり笑うマスターに、これは余計なことは言わないに限ると真帆は口を閉じる。
そんな真帆を見て可笑しそうに笑ったマスターは、チラッと後ろを振り返ってから再び真帆に向き直り、「田中ちゃんに、年上として助言をしよう」そう前置きをしてから言った。
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