春待月の一夜のこと
そうなると、服が半端にしか乾いていなかろうが濡れていようが、我慢して着てでも帰りたい。
ああ……でもあのワンピース、高かったんだよな……適当に洗濯して皺になってないかな……と奮発して買った服の心配をしていると
「何を言ってるの田中さん」
田辺が驚いた顔で言う。それが物凄くわざとらしくて、とんでもなく鬱陶しい。
「これが真夏ならまだしも、今は冬だよ?今年は暖冬だって言われてるけど、冬は冬だよ?外は寒風吹きすさぶんだよ?」
わざとらしい驚き顔だけでなく、その言い方までいちいち鬱陶しい。
でも言っていることが正しいのはわかっている。
窓からちらりと外の様子を窺えば、雪こそ降っていないものの雲が多めの空模様で、太陽の光はよく言えば柔らかいが、言い方を変えればとても弱々しい。
つまり、寒そうだ。そんな中に濡れた服を着て出ていったら、風邪を引くこと間違いなしといった感じ。
「年末が近づくこの時期は、田中さんのところだって忙しいでしょ?そんな時に風邪を引いて休むだなんて、それも風邪を引いた理由が、乾ききっていない濡れた服を着て出歩いていたからだなんて」
「…………」
ああ……でもあのワンピース、高かったんだよな……適当に洗濯して皺になってないかな……と奮発して買った服の心配をしていると
「何を言ってるの田中さん」
田辺が驚いた顔で言う。それが物凄くわざとらしくて、とんでもなく鬱陶しい。
「これが真夏ならまだしも、今は冬だよ?今年は暖冬だって言われてるけど、冬は冬だよ?外は寒風吹きすさぶんだよ?」
わざとらしい驚き顔だけでなく、その言い方までいちいち鬱陶しい。
でも言っていることが正しいのはわかっている。
窓からちらりと外の様子を窺えば、雪こそ降っていないものの雲が多めの空模様で、太陽の光はよく言えば柔らかいが、言い方を変えればとても弱々しい。
つまり、寒そうだ。そんな中に濡れた服を着て出ていったら、風邪を引くこと間違いなしといった感じ。
「年末が近づくこの時期は、田中さんのところだって忙しいでしょ?そんな時に風邪を引いて休むだなんて、それも風邪を引いた理由が、乾ききっていない濡れた服を着て出歩いていたからだなんて」
「…………」