春待月の一夜のこと
真帆は身動きも出来ずにきょとんとする。
目の前のほとんど裸の男が、真帆の手を握りにっこり笑って“結婚式”などと言っている。
「…………はい?」
ようやくそれだけ返してから、真帆は改めて考えた。
結婚式とは、一体誰のお式のことを言っているのだろうか。
“いつにしようか、田中さん”ということは、つまり“田中さん”との結婚式であって、田中さんとは真帆の名字でもあって……――――。
「け、けっこ、結婚式!!??!」
「っ……うるっさ」
思わず田辺が耳を塞いだおかげで、重なっていた手が離れていく。
激しく動いた衝撃で更に布団が体から剥がれると、真帆は明らかに自分が昨日着ていたものとは違う服を身に着けていることに気が付いた。
下はぶかぶかで裾の長いスウェット、上はこれまたぶかっとして袖が余るTシャツ。両方とも明らかにサイズが合っていない。そしてここは、一体どこなのか。
くすっと声が聞こえて真帆が視線を動かすと、塞いでいた耳から手を離した田辺が、今度は口元を抑えていた。
けれど隠しきれていない口元が、完全に笑っているのが見える。
目の前のほとんど裸の男が、真帆の手を握りにっこり笑って“結婚式”などと言っている。
「…………はい?」
ようやくそれだけ返してから、真帆は改めて考えた。
結婚式とは、一体誰のお式のことを言っているのだろうか。
“いつにしようか、田中さん”ということは、つまり“田中さん”との結婚式であって、田中さんとは真帆の名字でもあって……――――。
「け、けっこ、結婚式!!??!」
「っ……うるっさ」
思わず田辺が耳を塞いだおかげで、重なっていた手が離れていく。
激しく動いた衝撃で更に布団が体から剥がれると、真帆は明らかに自分が昨日着ていたものとは違う服を身に着けていることに気が付いた。
下はぶかぶかで裾の長いスウェット、上はこれまたぶかっとして袖が余るTシャツ。両方とも明らかにサイズが合っていない。そしてここは、一体どこなのか。
くすっと声が聞こえて真帆が視線を動かすと、塞いでいた耳から手を離した田辺が、今度は口元を抑えていた。
けれど隠しきれていない口元が、完全に笑っているのが見える。