春待月の一夜のこと
お得感だけでお買い物をすると、あとで冷静になって後悔することが多々ある。そのせいで、今もタンスの肥やしになっている服が幾つあることか。
今回はお買い物ではなく貰い物だけれど、それだって使わなければ収納場所を圧迫するだけなので、貰わないに越したことはない。
それに真帆の場合は、収納場所の圧迫だけでなく、心の傷を抉って来ること間違いなしなのだから。


「しょうがないなあ、じゃあ一旦保留ってことにしておこう。お返事は、後日改めて……っと」


こちらから貰うと言っておきながら一旦保留とは、相手がぶち切れはしないだろうか。真帆だったら、スマートフォン片手に思わず“はあ?”くらいは言ってしまうかもしれない。
まあ、怒られるのも文句を言われるのも田辺なので、別にいいけれど。


「そういえば、話が中途半端になってた気がするんだけど、何の話をしてたんだっけ?」

「なんのって……」


田辺が写真を見せてくる前は確か……


「昨日の夜に本当は何があったのかって話をしてた」

「あっ、思い出した。田中さんの恋愛相談を聞いてるところだったんだ」


こいつ、絶対に忘れてなかっただろうと言いたくなるようなタイミングだ。
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