春待月の一夜のこと
「……田中さん、指の力強過ぎ」
「ごめんって。……まあそもそも、離せって言った時に離さない田辺くんが悪いと思うけど」
それにしたってさ……と呟きながら、田辺はつねられたところをさする。
「田中さん、握力強いでしょ」
「普通だと思うけど」
「じゃあちょっと握ってみてよ、試しに」
「絶対普通だとおも――」
差し出された田辺の手を何の躊躇いもなく握ろうとして、真帆は気が付く。
「ちょっと」
「ちっ、ばれたか」
せっかく手が離れたというのに、危うくまた繋いでしまうところだった。しかも自分から。
「まあいいか、ハグも出来たことだし。……代償は大きかったけど」
一旦やめたはずなのに、またつねられたところをさすり始める田辺。わざとらしいので、真帆は無視することにした。
「満足したならそろそろ私の服」
「服なら着てるじゃん。それよりさー」
「ちょっと!“私の”って言ってるでしょ。これは私のじゃない」
「よく似合ってるよ。まるで田中さんのためにあるような服だね。それでさ」
「ごめんって。……まあそもそも、離せって言った時に離さない田辺くんが悪いと思うけど」
それにしたってさ……と呟きながら、田辺はつねられたところをさする。
「田中さん、握力強いでしょ」
「普通だと思うけど」
「じゃあちょっと握ってみてよ、試しに」
「絶対普通だとおも――」
差し出された田辺の手を何の躊躇いもなく握ろうとして、真帆は気が付く。
「ちょっと」
「ちっ、ばれたか」
せっかく手が離れたというのに、危うくまた繋いでしまうところだった。しかも自分から。
「まあいいか、ハグも出来たことだし。……代償は大きかったけど」
一旦やめたはずなのに、またつねられたところをさすり始める田辺。わざとらしいので、真帆は無視することにした。
「満足したならそろそろ私の服」
「服なら着てるじゃん。それよりさー」
「ちょっと!“私の”って言ってるでしょ。これは私のじゃない」
「よく似合ってるよ。まるで田中さんのためにあるような服だね。それでさ」