春待月の一夜のこと
「もう一回!次は質問攻めなし」

「いいけど、それでも俺が勝っちゃうと思うよ。田中さん、びっくりするぐらい弱いし」

「言ったな!次こそ絶対私が勝つから」

「それ聞くのももう何回目かなー」

「むっかつく!!」


ちょっと待ってて、お菓子足してくる。と立ち上がった田辺は、持っていたトランプの束を真帆へと預ける。


「それ、いい感じに切って配っておいて」


真帆は渡されたトランプを、丁寧に、それはそれはもう丁寧に混ぜ合わせる。
計二回行った神経衰弱で二回とも田辺が勝った時、仕掛けがあるのではないかと疑って、隅から隅までトランプを点検しているので、今回は混ぜるだけ。そしてそれを、四つの山に分けていく。

なぜ二人しかいないのに四つかといえば、これは田辺の意見で、二つに分けるだけではつまらないのと、手札が多くて持ちづらいから。
全てのカードが揃っていないと成立しないゲームは仕方がないが、大富豪と今回のダウトはこれで成立するので、この方法で行っている。
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