春待月の一夜のこと
「マカロニか、スパゲッティでもいいや。そういうのないの?」

「マカロニは使わないから買ったことないな。スパゲッティはこの間のお昼にナポリタンで使っちゃった」


なんて使えない……という呟きはもちろん心の中で。


「じゃあ……ご飯は?冷凍でもパックでもなんでもいいから」

「あるよー。冷蔵庫に昨日の残りご飯が」

「ならそれと、あと好きなスープを一袋。ちなみにチーズは?」

「とろけるやつがラスト一枚!」

「じゃあそれも。あとは、ブラックペッパーがあれば……」

「塩コショウでもいい?」


まあ、あるわけがないとは思っていた。チーズがあっただけでもいい方だ。


「器にスープ入れてお湯入れて、ご飯はレンジで温める。温まったらスープにご飯を入れちゃって、チーズも入れて混ぜたら完成。お手軽リゾット風」

「おおー!」


感動したような声を上げて、田辺がお湯を沸かしながらご飯を電子レンジに入れる。


「ねえねえ、それだったら、“栗カボチャのほっこり甘ーいスープ”ってのと、“キノコのうまみたっぷりクリームスープ”っての、どっちがいいと思う?」

「なんのスープでやっても美味しいから、完全に好み、もしくは気分で選んでいいと思うけど」


田中さんならどっち?とキラキラした目で問いかけられ、真帆は迷った末にキノコの方を指差した。
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