春待月の一夜のこと
「ああ……これ美味しい。簡単美味しいで最高」


田辺の満足そうな呟きを聞きながら、真帆もスプーンを動かす。
こちらに戻ってくる前、繁忙期の激務で疲れた真帆のお腹を満たしてくれたのは、大抵このリゾット風のご飯だった。


「これは、色んなスープでやってみたくなるね。今度は牛乳と、あとブラックペッパーだっけ?それも買ってこようっと」


楽しそうな田辺は、あっという間に完食してしまうと、真帆が中断したトランプの束を手に取って代わりに分け始める。
分け終えた辺りで真帆も食べ終わったので、器を脇に寄せて一山分のカードを手に取った。


「さて、じゃあゲーム再開だね。ルールの確認しとく?」

「質問攻めはなし」


わざとらしい笑顔が腹立たしいので、田辺の方を見ないようにして答える。
ゲーム自体のルールに関しては一度やっているし、その前に一応確認もしている。
田辺は上司に一度教わったとかで正式なルールを説明して来たけれど、真帆が知っているものより決まりが多かったので、今回は真帆が知っている単純なルールで行うことにした。
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