キスだけで誤魔化さないで。好きってちゃんと、言ってよね。【完】
「ちょっと、離してよ!」
「嫌だ! あんな男に琴里を取られるとか納得いかねぇし!」
「何言ってんの? 彼氏でも何でもない新田にそんな事言われる筋合いないんだけど?」
「だったらさ、琴里、俺と付き合ってよ? 俺の方が絶対琴里を好きな気持ち負けねぇし」
「ちょっと、いい加減にしてよっ!」
「なあ琴里、俺を見ろよ。俺は琴里じゃなきゃ駄目なんだよ」

 ひたすら自分の気持ちを押し付けてくる新田は、そのまま顔を近づけてくる。

「嫌っ、止めてってば!」

 力を振り絞り、何とか新田から逃れた私は鞄を手に教室を出ようとするけれど、

「きゃっ!」

 急いだあまり、足がもつれて教卓の前辺りで転んでしまう。

「琴里、大丈夫か?」

 そんな私にすかさず近付く新田。

「嫌、来ないでよ……」

 教卓を背に私は新田に追い詰められてしまい身動きが取れなくなった。

「なぁ琴里、俺、本気だよ?」

 新田の手が私の頬に触れる。

「……っ!」

 ゾワッと気持ち悪い感覚が全身を駆け巡り、身体がピクリと反応する。

「あの男とは、もうヤッたのか? まあ琴里は今までにも色んな男と付き合ってきたみたいだから過去の事は気にしない。けど、俺と付き合ったら絶対俺以外の男には触れさせない。俺だけが、触れられるんだ」
「……っ」

 頬に触れていた指が唇へと移動してきて、そのまま軽く撫でられる。

 目は血走り、口元に笑みを浮かべながら、まるで私が自分の彼女かのような発言をする新田に、恐怖すら感じていた。
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